「ブレードランナー」ファイナルカットをLIVE ZOUNDで観てきました

アイキャッチ・2021年春秋アニメ「86ーエイティシックスー」が非常に面白いので全力おススメしてみる 映画

今月はリドスコ強化月間ですね。
ブレードランナー(劇場公開1982年)については、「ワークプリント版」「劇場公開版」「完全版」「ディレクターズカット」「ファイナルカット」と5バージョンも存在し、あらゆるメディアでソフト化されています。
今回川崎チネチッタでリバイバル上映されていたのは「ファイナルカット」なので、VFXパートをオリジナルの65mmフィルム版を使った「高画質なディレクターズカット」ですね。
今年は4Kリマスター版のBlu-rayも発売されたので、またこの映画のソフトを買うはめになりましたよ・・・。

さてLIVE ZOUND版ですが、観に行って良かったです。
この映画の最も高画質にリファインされた版を大画面で観れるというだけでファンとしては満足なんですが、観る前の予想とは異なり、LIVE ZOUNDが意外と効果を発揮していました。
まず冒頭、オープニングからして重低音が体に響くほど強調されています。
ヴァンゲリスの曲に合わせたタイトルクレジットから始まるのですが、もうあそこの「ドドーン」からして重さマシマシで感動します。
続くVFXパートの未来のロサンゼルス空撮シーン、飛び交うスピナーのエンジン音なども迫力倍増になっており、高画質もあいまって、とてもこれが35年前に撮られた映画だとは信じられませんでしたね。
今年撮られた映画だと言ったって全く問題ないレベルです。
私はこの作品はソフトで何十回も観ているぐらい好きで、もうセリフとか完全に覚えているのですが、何度観ても120分間全く飽きないですね。
制作過程ですったもんだあった脚本のデキも決して悪くないのですが、映像・音楽・役者に見入ってしまうので、同じ話を繰り返し観ても何の問題もありません。

公開当時から謎の一つとされていた「植民地から逃げてきたレプリカントの人数」

セリフを逐一覚えているからこそ気になる事もあります。
劇中でブライアントが「宇宙植民地から男女3人ずつのレプリが逃走した」「タイレル社に押し入ろうとして、1匹は死んだ」という場面があります。
この「1匹は死んだ」が公開当時から謎で、6人から1人殺されたのなら残りは5人のはず。

だがブライアントがブリーフィングでデータを見せるのは4人(レオン、ゾラ、プリス、ロイ)。
しかもデッカードも処分対象が4人だと思っている。
一体どういう事?と私もずっと混乱していました。

これについては諸説あり、残り1人については「レイチェル」あるいは「デッカード自身」などと言われたりしました。

この2人のいずれかだと、え?元々宇宙植民地にいたのに、地球へ密航した後どこかで記憶操作でもされたの?って事になるのですが、実際には脚本ミスというか、いい加減な制作進行の結果だったようです。

で、LIVE ZOUND版ではこのセリフが「タイレル社に押し入ろうとして、2匹は死んだ」という字幕になっていました。
記憶違いかもしれませんが、これなら数は合います。でもオリジナルのセリフとは違うはずなんですよね。

まぁ、元の版でも「タイレル社に押し入った1人は男で、殺処分された。もう1人の女は捕まってタイレルの姪の記憶を移植され、レイチェルとなった」であれば、ゾラを撃った後のデッカードとブライアントのやりとり

ブライアント「残り3匹だな。」
デッカード「2人だろ?!」
ブライアント「3匹だ。タイレル社に居たレイチェルって女。自分がレプリと気づいて逃げ出しおった。」

には何の違和感もありません。
また、レイチェルが最初にデッカードの自宅へ訪ねて来た時、デッカードがレイチェルに対して「やたら怯えて」いた事にも説明がつきます。
ブライアントがデッカードに対してターゲットのレプリについて説明するシーンでも、レイチェルが残り1人であれば、後のシーンでVKテストするし、彼女は特別モデル且つ再教育済みなので割愛したのかも知れません。
でないと、5人逃走中なのに4人のデータしか見せない、しかも何の説明も無いのは尺短縮のカットとしてもお粗末すぎるでしょう。
そらワークプリント見せられたテスターも微妙な顔するでしょうよ。

ブライアントはこのブリーフィングの際「タイレル社に1匹いる。テストしてこい。」と言ってデッカードをタイレル社に送るので「(レイチェルとは言ってないが)捕まった1人を再教育したからテストしろ」と言っているとも取れます。
そうするとタイレル社でデッカードがレイチェルをテストした時、デッカードが「レイチェルを最初人間だと思ってたが、テストの結果レプリカントだと判明した」という流れがまぁ、分からんでもないです。

タイレル社長はレイチェルを再教育して秘書としてデッカードに紹介したが、もともと警察に依頼された「再教育したレプリカントの安全性チェック」の対象を「人間」と称してデッカードにテストさせた。
デッカードはそんなつもりは無かったが、社長から直々に「頼むよ」と言われたのでデモンストレーションしたら、相手がレプリだと気づいてしまった。
社長は「おかしいな。記憶移殖したんで本人も人間だと思い込んでて、テストに引っかかるはずじゃじゃなかったのに。」というシーンだとすると、説明不足過ぎて謎だらけだったあのVKテストシーンや脱走したレプリカントの人数にも辻褄が合うような気がします。

ですが、今回観たファイナルカットの字幕が「タイレル社に押し入ろうとして2匹死んだ」で正しいとすると、上の仮説は全く見当違いで、単にデッカードは上司の命令でタイレル社に、今回の脱走事件とは無関係のレプリカントの1人をテストしに行った(何のため?単にウォーミングアップ?)という事になります。

まぁ、昔から謎と議論の尽きない映画です。

S・キューブリックやデヴィッド・リンチの作品にも多いんですが、「ブレードランナー」もスルメ映画と言いましょうか、しばらくして気づくとまた何故か観たくなるタイプの映画です。
さて、「ブレードランナー2049」は、このマスターピースの続編たりえるのか・・・。
正直、今のところ期待より不安の方が大きいかな。

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